日本では古くから年齢や勤続によって賃金が上がる年功序列型の人事制度がとられてきたことはあまりに有名です。これは当時工場労働者などの熟練工が多かった時代に年齢・経験とスキルが比例したことや、高度経済成長という背景があってうまく機能してきた制度ですが、次第に人件費の負担が大きくなり、また、産業構造の変化によるホワイトカラーの増加から賃金とスキルがマッチしなくなり、さらに深刻なポスト不足が生じたため、新たな人事制度への転換が求められるようになりました。 | |
1970年代に職能資格制度を中核とした能力主義が広がっていきました。この制度は職務遂行能力を評価し、資格等級にあてはめて職能給を支給するという仕組みなので、一律に上がる人件費の増加や、賃金とスキルのミスマッチという問題に対して有効に機能するものと期待され、また、ポストと能力を切り離すことでポスト不足にも対応できると考えられました。しかし、従来の年齢給・勤続給についてはこの制度でも残されたことや、評価の対象が保有能力だったために能力が下がるという考え方がなかったことから、結果として年功的な運用になっていきました。現在でも中小企業を中心にまだ多くの企業において、この制度は運用されているものと考えられます。 | |
バブル崩壊後の不況に突入した1990年代、アメリカを参考にした成果主義人事制度を先駆けて導入する企業がでてきました。業績と成果によって社員を評価・処遇し、成果をあげた社員には年齢・勤続に関係なく高い報酬を与えることで競争意識を煽り、モチベーションを高めて業績の向上を図るとともに、優秀な人材の社外流出を防止するという趣旨の制度です。年功序列・終身雇用は崩壊し、大きな転職市場が生まれ、2000年を過ぎると大半の企業が成果主義へとシフトしましたが、結果的に成果主義は多くの企業において失敗したといわれています。しかし、現在も、そして今後もなお、成果主義自体は主流として続いていくものと思われます。 |
人事制度の構築を支援するコンサルティング会社は数多くありますが、そのコンサル内容には法的な視点が欠けているということが一般的にいえます。人事制度は労働法とリンクする部分が少なくありません。仮に労働法を無視して制度を設計した場合には、後々に想定外の損失やリスクが発生することも考えられます。
当事務所は労働法に精通した専門家としての立場から法的な要件を満たした人事制度を設計します。また多くの場合、人事制度移行の際に就業規則や賃金規程の改定が必要になりますが、あわせて承ることが可能です。
人事制度を検討する際、難解な用語を使って非常に複雑な制度をつくりあげるコンサルタントがいますが、難解で複雑な制度と組織のパフォーマンスには何の相関関係もありません。むしろ難解で複雑な制度は従業員が理解できません。理解できないものを納得できるはずはなく、したがって士気向上にも組織活性化にもつながりません。従業員はみな専念すべき職務があり、人事制度はあくまで会社が本業で成果をあげるための補助ツールでしかありません。従業員に負担をかける制度は優れた制度といえません。重要なのはその企業とそこで働く従業員に適した制度をつくることであり、そのためのポイントをおさえることです。
業績の向上(=労働分配率の低下)
「評価制度」「賃金制度」「等級制度」の3つを基本フレームとしたトータル人事制度を構築します。「年功型」「職能資格制」「職務等級制」「成果主義」「役割等級制」の5類型を基本としながら、様々な構造の人事制度に柔軟に対応することが可能です。