就業規則

就業規則は問題社員の対応に必要不可欠

就業規則は、労働者の労働条件や服務規律を定めるものであり、労働基準法により常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則の作成、届出が義務付けられ、違反した場合は罰則があります。
しかし、実務上重要なのは、原則として就業規則を備えていない会社は、労働者に対して懲戒解雇をはじめとする懲戒処分を課すことが許されないということです。つまり、就業規則がそもそもない、またはあっても内容がきちんと整備されていない会社は、事実上問題社員に対応することが困難なのです。仮にそのような状況のもとで懲戒解雇された社員が法的手段に訴えた場合、解雇無効と判断される可能性は高く、係争中の未払賃金、遅延損害金に加え、多額の損害賠償を請求されることも考えられます。

就業規則がなければ行使できない会社の権限

懲戒権の他にも、出向命令等の一部の人事権、労働者に対して様々な検査や調査を行う権限、労働時間制度にかかわる事項や振替休日・代休付与命令など、就業規則の条文に根拠を求められる権限や制度は少なくありません。規定の仕方によって企業のリスク対応能力に大きく影響します。

就業規則は労働契約の内容になる

就業規則は労働契約の内容になる

就業規則は、会社の様々な権限を根拠づける一方で、その記載は労働者との労働契約の内容になり、義務として会社を拘束することになります。就業規則の作成・変更にあたっては、労働契約の内容になるということを念頭においたうえで、労働者との権利義務として規定すべきものなのかどうかを慎重に判断し、実行できない労働条件は規定すべきではありません。

労使紛争の多くは就業規則の整備によって防ぐことが可能

労使紛争が年々増加している近年、労働問題・労使トラブルにスムーズに対応する為のツールとして、就業規則の重要性はますます高まっているといえます。なぜなら、労使トラブルが発生した際は、就業規則の規定内容とその運用実態が決定的な判断材料となることが多いからです。
また、労働契約の内容について「言った」「言わない」の争いが起きた場合、労働者が有利になる傾向が強いため、労働条件は労使間で疑義が生じないよう就業規則にあらかじめ明記することが予防法務の観点から重要といえます。

周知しなければ効力は生じない

就業規則は労働者に周知することではじめて効力が発生します。周知していない場合、労働基準法上の作成義務違反は免れるにしても、事実上就業規則を作成していないのと同じとみなされます。
「就業規則を労働者に見せると、有給休暇などの様々な権利を主張しだす恐れがある」という理由で周知していないという話を聞きますが、労働者に周知しないことによる法的リスクの方がはるかに大きいものと考えられます。一刻も早く周知することをお勧めします。

モデル就業規則の危険性

モデル就業規則の危険性

市販の書籍やウェブサイトには、モデル就業規則(就業規則の見本)が掲載されていることも多く、また、行政がモデル就業規則を配布することもあります。就業規則は会社の規模、業種、方針などの個別の事情を考慮して実情にあったものを作成する必要があります。労働法に関する知識がないまま安易にモデル就業規則や関係会社の就業規則を転用した場合、必要以上に労働者に有利な内容になってしまったり、最新の法令が反映されていなかったために、知らないうちに法律に違反してしまうことなどがあり、非常に危険です。

不利益変更に注意

労働契約法の定めにより、合理的な内容の就業規則を労働者に周知した場合には、就業規則に定める労働条件が労働契約の内容になるとされています。つまり、就業規則は労働契約書の集合体のような役割を果たしており、個別に交わす契約書との関係においては最低労働条件を定める機能をもっています。したがって就業規則を改定するということは、労働契約の内容を変更することを意味します。
他方、就業規則は会社が一方的に作成・変更できるものであるため、変更前の労働条件を下回る内容に改定する際には不利益変更として問題になります。不利益変更を行う際には、労働者の同意をとっておくのが望ましいといえます。なぜなら、労働基準法上は就業規則の改定に労働者の同意は必要とされていませんが、同意なしの不利益変更を行って後に労働者に裁判を起こされ、会社が敗訴した例があるからです。不利益変更を行う場合には変更の合理的な理由が認められなければ、裁判で無効とされてしまうことがあるのです。
不利益変更が予定される場合には、事前に社会保険労務士にご相談いただくことをお勧めします。

就業規則に求められる要素

  • 問題社員に対してスムーズに対処できる
  • 労働条件を巡って労使間でトラブルにならないよう明確に規定されている
  • 必要以上に労働者に有利な条件を定めるものでない
  • 規定する内容と実態が乖離していない
  • 服務規律、懲戒など会社の方針を明示することにより会社の秩序維持に資する
  • 労働条件が不明確なことにより労働者が不安や不信感を抱き、士気低下につながるものでない

当事務所が作成する就業規則のポイント

POINT1: コンプライアンス

法令を満たしている

POINT2: リスク管理

トラブルに対応できる機能を備えている

POINT3: 人材マネジメント

会社の方針を反映

作成・改定の流れ

STEP1

ご依頼いただいたら、まずは実態把握のため、貴社の労働条件、就業上のルール、職場の慣行、過去に起きたトラブル等について詳しくヒアリングを行います。

STEP2

改定の場合には、既存の就業規則をチェックしてリスクの診断と問題点の洗い出しを行い、どのような改定が必要になるのか概要を説明いたします。

STEP3

ヒアリングした情報および洗い出した問題点をベースに原案を作成し、状況に応じて貴社と数回打ち合わせを重ねながら加筆修正を行います。

STEP4

完成版をデータで納品し、労働基準監督署に届出を行います。
また、完成後、ご希望に応じて当事務所が、従業員向けの説明会、または管理職向けの運用研修等を実施いたします。

就業規則の作成・見直しは社会保険労務士に

社会保険労務士でない者が、報酬を得て就業規則の作成・変更を行うことはできません。就業規則を作成・変更するためには、労働関係諸法令に関する高度の法律知識を必要としますので、就業規則の作成・変更を報酬を得て行うことができるのは社会保険労務士に限られています。